変わったのは、途中のひとつの和音
机の上の道のりは C→Am→F→G→C です。3つ目のFをFmに替えると、帰り道が変わります。Fはファ・ラ・ド、Fmはファ・ラ♭・ド。動いたのはラがラ♭に下がる1音だけで、その後はGからCへ、どちらも同じように帰ります。それなのに、Fmを通った版は、帰ってきたときに少し目を伏せているように聞こえる人が多いようです。私には、明るい道を歩いていたら雲がひとつ通り過ぎ、家に着くころには晴れていた、というように聞こえました。
切なさは、Fmという和音そのものだけから来るのではなさそうです。前にあるCとAmは明るい、あるいは穏やかな景色。そこにFmで一瞬だけ影が差し、そのままGからCへちゃんと帰ってくる。「影が差したのに、帰ってくる」という落差が、切なさの正体のひとつです。試しにFmで止めてしまうと、影があるだけで切なくはならない、と感じる人もいます。
名前を知る
Fは、トニックのCから見て4番目の和音で サブドミナント と呼ばれます。それをマイナーにしたFmが サブドミナントマイナー です。
F(サブドミナント)
ファラド
3つとも、Cメジャーの音階の中の音Fm(サブドミナントマイナー)
ファラ♭ド
ラ♭は、この調の外から借りてきた音Fmに含まれるラ♭は、Cメジャーの音階にはない音です。同じ土台を持つCマイナーから一時的に借りてくるので、借用和音とも呼ばれます。ラ♭は次のGの和音のソへ半音で下りていくため、影が差したあとに自然と帰り道へ戻ります。
理論上の事実
FをFmに替えると長3度が短3度になる。ラ♭は調の外の音で、次の和音のソへ半音下がって進む。
景色(比喩)
この記事では、帰り道の途中で夕暮れが差す、という絵で表しています。
感じ方(文脈で変わる)
切ない・懐かしい・ドラマチック。テンポや前後の和音、歌い方、Fmをどれだけ長く伸ばすかでも変わります。
Fmを入れれば必ず切なくなる、というわけではありません。速いテンポやにぎやかな伴奏の中では、華やかなアクセントとして聞こえることもあります。切なさの型はほかにもあり、次の体験では、明るい和音のあとに影が差す別の進行を扱います。
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王道進行とは? 明るい和音のあとに影が差す理由
F→G→Em→Am。明るく進んでいた流れの3つ目でふっと影が差し、落ち着かないまま次へ続く。4536進行とも呼ばれるこの型の正体を、机の上で確かめます。
- 参考: Open Music Theory「Mode Mixture」(同主調からの借用)
- 参考: Open Music Theory「Tonic, Dominant, and Predominant」(和音の役割)
- この記事の音は、ブラウザの中で合成しています。楽曲の録音や外部サービスは使っていません。
