この流れの、どこで景色が変わる?
「この流れを聴く」で鳴っていたのは、F→G→Em→Am の4つです。最初の2つは、窓を開けたように明るく進みます。ところが3つ目の Em に入った瞬間、同じ部屋のまま光の角度が変わったように聞こえた人が多いのではないでしょうか。私には、木漏れ日が一度だけ雲に隠れて、そのまま夕方へ滑り込むように聞こえました。
3つ目を E メジャーに差し替えると、この影は差しません。かわりに、次の Am へぐっと引っぱる力が生まれます。Em か、E か。動いたのは真ん中の音ひとつなのに、流れの意味がまるごと変わります。「影」の正体は、この1音です。
もうひとつの見どころは、終わり方です。4つ目の Am は家(C)ではないので、流れは着地しきらず、そのまま次のひと回りへ続いていきます。この「落ち着かないまま続く」感じも、この進行らしさの一部です。
名前を知る
この進行は、度数で書くと IV → V → IIIm → VIm です。数字だけを並べて 4536進行 とも呼ばれ、日本語では 王道進行 という名前が定着しています。J-POPで多く使われてきた型として知られています。Cメジャーでの実際の和音と構成音は、次のとおりです。
| 順番 | 度数 | Cメジャーでの和音 | 構成音 |
|---|---|---|---|
| 1 | IV | F | ファ・ラ・ド |
| 2 | V | G | ソ・シ・レ |
| 3 | IIIm | Em | ミ・ソ・シ |
| 4 | VIm | Am | ラ・ド・ミ |
体験で差し替えた E(ミ・ソ♯・シ)は、Cメジャーの調にもともと無いソ♯を含みます。Em の真ん中の音を半音ひとつ上げただけで、影が消えるかわりに、次の Am へ向かう強い引力が生まれます。
理論上の事実
IV → V → IIIm → VIm の4つを並べた進行。3つ目と4つ目がマイナーで、家(I)に着かずに次のひと回りへ続く。
景色(比喩)
この記事では、木漏れ日の窓に一度だけ雲がかかり、そのまま夕暮れへ滑り込む、という絵で表しています。
感じ方(文脈で変わる)
影が差す・切ない・胸が高鳴る。速さや音の高さ、メロディの動き、前後に来る和音でも印象は変わります。
この進行だから必ず切ない、というわけではありません。同じ F→G→Em→Am でも、速いテンポや明るい音色で鳴らすと別の表情になります。次の体験では、低音が階段のように下っていく別の型を扱います。
次の体験へ
カノン進行とは? 下っていく低音の上で景色が続く理由
C→G→Am→Em→F→C→F→G。8つでひと回りして何度でも繰り返せる流れ。1564進行とも呼ばれるこの型の落ち着きの正体を、低音の足どりから確かめます。
- 参考: Open Music Theory「Roman Numerals and SATB Chord Construction」(度数表記)
- 参考: Wikipedia『王道進行』(別名・度数の事実)
- この記事の音は、ブラウザの中で合成しています。楽曲の録音や外部サービスは使っていません。
